熊本の地下水汚染2
平成3年(1991年)9月13日
飛田水源地2号井戸、トリクロロエチレン汚染により取水停止。
『熊本市水道事業年報』の「水道事業の沿革」に記されたこの一行。熊本の地下水汚染が初めて発覚し、公文書に記された貴重な記録だが、その後、水道事業年表に新たな汚染を記した一行が付け加えられることはなかった。
その後、汚染が見つからなかったわけではない。むしろ逆で、年々汚染井戸は増えていく。
有機塩素化合物による汚染地区の一覧を掲示する。上が平成12年(2000年)、下が平成17年のものだ。
平成12年と比べて、平成17年の方が増えている。
トリクロロエチレン(TCE)は半導体工場、テトラクロロエチレン(PCE)はクリーニング業による汚染が主である。
それぞれの毒性は下の表のとおりである。どちらも自然界に存在しない化学物質で、わずかな量で肝障害やガンを引き起こす恐れがある。
半導体工場については、有機塩素化合物による汚染のほか、最近では有機フッ素化合物(PFOA)による地下水汚染も懸念されている。
熊本は九州のシリコンアイランドと呼ばれ、豊富な地下水を利用した半導体製造がおこなわれてきた。その陰で、やはりと言うべきか、地下水汚染もじわじわと進んできた。
再来年には台湾の大手TSMCと国内大手ソニーが手を組んで、巨大な半導体工場が菊陽町にできるという。
菊陽町で出た工業排水は、下水道を通って熊本北部浄化センターへ運ばれ、坪井川へ放出される。
なぜ、坪井川まで持ってきて放出するのか。
放っておくと“第二の水俣病”を引き起こしかねない気さえする。
その予防ためには、坪井川のモニタリングが必要ではないだろうか。
現在、坪井川のモニタリングは、北部浄化センターより上流にある堀川との合流地点、及び、かなり下流の上代橋付近で行われている(化学物質の調査ではなくBOD、COD、SSといった従来の汚濁の調査だが)。
熊本北部浄化センターが処理水を放出している箇所でのモニタリングが必要ではないだろうか。