NHK特集「誰も知らない日本の枯葉剤」 高知四万十川~熊本坪井川まで
2022年1月21日に放送されたNHK番組「誰も知らない日本の枯れ葉剤」をご覧になっただろうか?
「枯れ葉剤」は、ベトナム戦争(1960年~1971年)で使われた化学兵器である。ベトナムのジャングルに潜んで、粘り強く抵抗を続けるベトナム人民軍兵士に業を煮やしたアメリカ軍は、ベトナムのジャングルを林業用除草剤で丸ごと枯らすという作戦に出た。その時に使用された薬品が枯葉剤、通称2,4,5-T(ニイヨンゴティー)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸である。
2,4,5-Tには、猛毒のダイオキシンが含まれており、その毒性は青酸カリの1万倍とも言われる。
ガンや奇形の原因にもなる。
この2,4,5-Tを製造に加担していたのが三井化学大牟田工場。
ベトナム戦争の終結後、大量の在庫を抱え、いったんは農薬(除草剤)として登録したものの、毒性の強さから使用中止となり、残った大量の薬品は全国の国有林に、コンクリートで固められて埋められていった。
50年後の今日、固めたコンクリートが劣化し、薬剤が山林に漏れ出すことが懸念されている。
さらに問題を深刻にしているのが、埋設時に既定の分量や処理方法が守られず、あちこちの山林に、定められた数倍の量が埋まっていることである。
番組では冒頭から熊本県天草市の山中にある埋設場所が紹介される。その他、芦北、福岡の那珂川市、佐賀の吉野ケ里ほか、2,4,5-Tが埋設されている場所は九州だけで19か所に及ぶという。
埋設場所のリストを見ていた私は目を疑った。熊本県北部町とある。
熊本県北部町は、市町村合併があって現在では熊本市。平成2年までは飽託郡北部町であった。まさに坪井川源流がある、あのあたりである。
かつてはいざ知らず、現在では市街地といっても差し支えない、あんなところに猛毒のダイオキシンを含有した2,4,5-T が埋められているのだろうか?
しかもリストには「量」と書かれている。これは、規定の数倍の量が埋まっているということだ。ただでさえ毒性が高いのに、トン単位で埋まっている可能性がある。
先日、訪れた時に感じたが、坪井川は大事にされていない。
ホタルが舞い、セリを摘むことができた清流の小川は、用水路にされると同時に水量が激減して澱んだ。
かつての水源の上には、無数のビニールハウスが立ち並び、主にスイカを作っているのだという。植木のスイカは全国的に有名だが、植木町は知る人ぞ知る、日本の三大地下水汚染地帯だ。さらに北の方には工業団地もある。
ビニールハウスの隙間の土地には、産廃や建設廃土の処分場が入っており、
周辺の山中には2,4,5-T。
これだけ揃っていると、組織的な意図すら感じる。
ここは汚してよいエリアという認識なのだろうか?
先日、四国の四万十川を見に出かけた。四万十川も綺麗な川なのだが。。。
その四万十川の中流域(といっても、結構な山中なのだが)に松葉川温泉というところがある。
松葉川温泉の前をバス路線と同じように通りすぎて、突き当たったT字路を右折すると、どんどん山中に迷い込んでいく。
ふと、妙な景色の場所に出た。山の斜面一面が白く枯れている。
ちょうど、海の中でサンゴが死んで白化したサンゴ礁のような。異様な景色である。
これはもしかして、2,4,5-Tが漏れ出しているのでは…、
しかし、全国的に清流として有名な四万十川の近くに埋めるだろうか…。
ネットでリストを確認すると、四万十町の名前があった…。
赤旗新聞の記事↓ 記事中に埋設場所のリストがあった。
なるほど、NHKの番組内で、行政が「年に1回「目視」で確認している」と言っていたのは、これか!
と、納得がいく。
漏れ出していたら、周辺の山林が白骨のごとき枯れ林になるわけか。
しかし、廃棄が決まった当時、確か、水源の近くには埋めるなという通達だったのでは、、、と記憶しているのだが、
まったく意に介されていない。そもそも処分方法や処分量も守られていないのだから、なにもかも守られていないのだろうか。どうしてそんなことに…
ちなみに、その夜、私は喉が痛くなった。
山中だったので、うっかりマスクを外していたのだ。
2,4,5-T の埋設に携わった営林署の職員の中にはガンに倒れた人も多いと番組で紹介していた。
現代にこれほどガンが多いのは、汚染物質に触れる機会が増大しているせいではないのか。
今や環境を壊さないということが最優先の時代だ。
無秩序な開発や行政の都合が優先された時代は、もはや時代遅れ。
安く処分したつもりで、物言えぬ人々に多大な不利益を押し付け続ける現状を、どうにかできないものなのだろうか。
枯葉剤がかつての北部町のどのあたりに埋められているのか、はっきりとはわからない。
だが、2,4,5-T を封じ込めたコンクリートが劣化を始めるほどの年月が経った現在、漏れ出さないという保証はないのではないだろうか。